書評 江戸川乱歩全集・第2巻「パノラマ島綺譚」

1.「闇に蠢く」
2.「空気男」(「二人の探偵小説家」改題)
3.「一寸法師」「湖畔亭事件」
4.「パノラマ島綺譚」


 久しぶりに、乱歩が読みたくなりました。新たな作品を読むのは高校の時以来。実に20年ぶりです。
 今回買ったのは光文社文庫の江戸川乱歩全集・第2巻「パノラマ島綺譚」です。「パノラマ…」は乱歩の代表作の一つとの呼び声が高い作品にもかかわらず、未読だったため、この機会に読んでみることにしたのでした。
 ちなみに第2巻の内容は、上記の五作品に大林宣彦による「私と乱歩」というエッセイを加えた六編となっています。
 この光文社の全集の特徴はやはり収録作品のバリエーションでしょう。大人向けの小説だけでなく、少年探偵団や怪人二十面相が登場する少年向けの作品群も入っていますし、連作のもの、そればかりか未完で終わったものまで収録されています。およそ発表されたものはあまさず網羅されているのではと思われます。
 基本的には発表された順にまとめられてありますが、1巻に1作は有名作品を収録してあり、気配りのあるラインアップになっているようです。一冊の中に有名作品と有名でない作品とが入っているため、思わぬ寡作にぶつかる楽しみがありそうです。しかし、それほど乱歩に深く付き合うつもりはない、有名どころを手軽に読みたいという人には、扱いづらい全集かもしれません。
 思うにこれは、始めから、少年探偵団から未完成までも、全て手元に置いておきたいという熱心なファンが、コンプリートすることの方に重きを置いて編集されたものと思われます。表紙も、よくあるつるつるした紙ではなく、マーメイド紙のようなツヤ消しの紙を使った丁寧な作りになっていて、普通の文庫本よりも高級感があります。フェティシズムに訴えるというか、単なる本というよりもモノとして集めたくなる全集です。
 また各作品の末尾には乱歩自身による解説が載っており、創作の簡単な裏話などが聞けます。これもファンには嬉しいのではないでしょうか。
 せっかく久しぶりの乱歩ということで、書評を書きました。作品の核心部分に言及している箇所があります。お気をつけ下さい。


                           →「闇に蠢く」


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