あとがき
ガルシンの「アッタレーア・プリンケプス」に触発されて、初めて童話風の作品を書いてみました。
「アッタレーア・プリンケプス」とは、物語の主人公である棕櫚(シュロ)の名前で、彼女は色々な南国の植物と共に温室に植えられています。植物たちは皆、狭い温室に閉じ込められて、青空も見えない、自由に風も吸えない暮らしに不満を持っています。アッタレーア・プリンケプスは、皆に、力を合わせて自由を得ようと呼びかけます。一斉に丈を伸ばして温室のガラスを破ろうと言うのですが、いざとなると応える者はいません。アッタレーア・プリンケプスは一人で、温室を壊そうと試みるのです……。
この作品は、実際には童話として書かれたものではなく、当時のロシアと民衆の姿を温室になぞらえた社会小説(?)ですが、仲間にそっぽを向かれながらも一人、自由を求めるアッタレーア・プリンケプスや、そんな彼女に素朴な心で好意を寄せ、応援する蔓草の姿は、哀れな結末も含めて童話的美しさがあり、真似てみたくなったのでした。
ちなみにガルシンは二編ほど童話も書いていますが、こちらは残念ながら未読です。いずれ読んでみたいです。
さて初めて童話を書いた感想ですが、多少は楽に書けるのでは、と、もくろんだ部分も実はあったのですが、時代小説も童話も、書く大変さは変わりませんね。むしろ、筆者自身の語彙の貧しさ、構成力の低さなどを痛感しました。機会があればまた挑戦したいですが、今度は絵本の挿絵のように、シンプルな中に深い情感が漂うような、そんな作品が書けたらと思います。
参考資料
■フセヴォロド・ミハイロヴィチ・ガルシン(Wikipedia)
■アッタレーア・プリンケプス(青空文庫)
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